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2010年5月、たくさんの人に惜しまれつつ亡くなった中学校教師がいた。

蒲 益男(かば ますお)、享年58歳。

彼の葬儀には、教え子だけでなく、世代や職業を超えた多くの人が集まり、参列者は皆、号泣して見送ったという。

これほどまでに惜しまれる教師とは一体どのような人物だったのか?

当時の彼を取材すべく、彼の教師生活の原点でもある町、大阪は西成区を訪れました。

1970~80年代を蒲先生とともに過ごした同僚教師と卒業生から話を聞くことができたのですが、そこで見た〈人との距離感〉に驚きと羨望に近いものを感じました。

三十年以上も前のことをまるで昨日の出来事のように話す教師と生徒のあいだには、「教育者と学び手」、「大人と子ども」ではない、お互いが『人として対等』である人間関係が築かれていることが容易に想像できました。

当時どのような学校生活が送られていたのでしょうか。

社会はバブル景気で高揚ムードの一方、学校には校内暴力が急増していました。

厳しい環境で暮らす子どもたち、また、エネルギッシュにたくましく生きる子どもたち。

それぞれに問題を抱えた生徒たちを思い、熱くぶつかっていった教師たち。

取材を進めるほど明らかになる、驚きと涙のエピソードに溢れた当時の学校生活。

真正面からぶつかり合った者同士だから築くことができた『人として対等』である人間関係は、三十年後も変わることなく続いていくのだと知りました。このアツい人間ドラマを広く大勢に伝えていきたいという思いから映画「かば」の制作をはじめました。